ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町 見学会

2017年4月17日、ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町にてランチョンセミナーを開催した。昨年7月にオープンしてから9ヶ月が経ったので、既に見に行ったり、充分に情報を得た方も多いだろうと思っていたが案に反して、参加募集当日に定員が埋まってしまう結果になった。

オープン前から色々なルートで見学会開催を交渉してきたが上手く進まず、今回漸く実現出来たのは、ホテル側と見学する側の互恵関係が成立したためだろう。

会場となった最上階36階のOasis Gardenはフロアの東面を占め、南から北まで180度の景色を楽しめる。通常の客は入口に近い南側の客席を埋めており、奥まった北側にはレクチャーや集会に使えるエリアがある。

そこで最初にランチをいただいた。参加者の方々には4人掛けテーブルに詰めて着席いただいたが、前菜とメイン、デザートにコーヒーまで話も弾んだことと思う。

 

「赤坂」から「紀尾井町」へ

かつてイタリア・カラーラの石材業者から「世界で最もビアンコ・カラーラを上手く使った建物は赤坂プリンスホテルだ」と言われたことがある。白大理石で徹底したロビーはイタリアでも見られない印象的なものだった。

それが再開発されてオフィス、住宅等の他の要素をもつコンプレックスとなった。

近年こうした高級ホテルを含む複合開発が多いが、ほぼ共通してホテルを最上階に配置し、ロビーの規模を抑えて敢えて高級感と敷居を高さを演出することが行われる。

新しい施設の中心はオフィスであり、そのロビーは充分に大きく、旧赤坂プリンスホテルの記憶を呼ぶビアンコ・カラーラが用いられている。

同様に、レストランと対峙して配置されたレセプションは白大理石を基調にしている。最上階から周囲を眺めると、東京のほぼ中心にありながら周囲には同程度の高層ビルが無いため、非常に見晴らしが良い。皇居や東宮御所の緑も間近に見下ろせる、都内でも有数の眺望を持つ建物であることは間違いない。

 

ランチ後のセミナーでは、ホテルのコンセプトとブランド戦略について説明され、先ずなぜ赤坂の名を外し、「紀尾井町」としたかが語られた。

紀尾井町の名は、御三家のうち紀伊徳川家と尾張徳川家譜代大名石高筆頭の井伊家の江戸屋敷があったため、その頭文字を取って並べたことに由来する。

紀尾井町千代田区に属するが、赤坂は港区である。旧赤坂プリンスは千代田区にありながら赤坂を名乗っていたことになる。新たに生まれ変わるに際してはプリンスホテルのブランドの中でも最上級の「ザ・プリンスギャラリー」を冠すると共に、都内でも最高の立地をアピールするこの名を選んだとのこと。

同時にスターウッドホテルズのラグジュアリーコレクションにも加えられている。

 

眺望をコンセプトとして徹底したインテリア

施設計画の説明を聞いた後、ロビー、レストラン、バー、スタンダードとスイートの客室を見学させていただいた。インテリアデザインは最高の眺望を活かし「Levitation(空中への浮遊感、浮揚感)」をコンセプトとしてロックウェル・グループ・ヨーロッパによって行われた。

総帥のデビッド・ロックウェル氏は10年余り前にニューヨークで一世を風靡し「最もフィーの高い建築家」と言われていた。その日本での初仕事ということだが、実際に見てみると「建築家らしいインテリア」と強く感じた。

材料の質感や手触りに拘るのではなく、配置や機能を重視し、最初に決めたコンセプトを徹底して追及する姿勢が見られた。

ロビーや共用部では白大理石に加えてステンレスを多く用いてアートワークとのコンビネーションを重視したシンプルなデザインが為されていた。

客室デザインのコンセプトは「Framed Kaleidoscopic View(縁どられた万華鏡のような眺望)」として、大きな窓を額縁に見立てて眺望を絵画のように扱い部屋の主要素としている。

そこには寝そべれるベンチ状のソファが取り込まれ、重いカーテンは無く、薄いデイカーテンが最小限の存在感を以って舞台の幕のようにあるのみである。遮光は額縁の奥に隠されたロールブラインドによる。

さらに窓面では、室内側のサッシ枠よりも外側の押縁をずらして拡げ室内側からフレームが見えないような工夫がされている。

バスルームは寝室部分とは全面ガラスで仕切られ、バスに浸かりながらも眺望を楽しめるように配置も工夫されている。ガラススクリーンはスイッチ一つで白く不透明になる。

それらの開閉、操作は全てiPadを使って行われる。このアプリはなかなか使い心地が良かった。

スイートルームではベッド周囲の床を高くし、ベッド面は廻りのソファの背と同じくらいの高さにしてある。ベッドで過ごす一日の最後の時間まで眺望を楽しむための配慮だろう。

今回は見学ルートに入いっていなかったが、曳家保存された旧李王家邸も土地の歴史を継承する上で重要な施設であり、是非またゆっくりとお茶を飲みに訪れたいと思っている。